業務効率化やBPO導入を検討するなかで、どの業務を社内に残し、どの業務を外部へ委託すべきか判断に迷う経営者は少なくありません。仕分けの基準が曖昧なまま外注を進めると、本来社内で磨くべき業務まで手放してしまい、競争力を損なう恐れがあります。
そこで重要になるのが、コア業務とノンコア業務の仕分けです。コア業務とは企業の競争力や売上に直結する中核業務を指し、ノンコア業務とは成果への直接的な貢献度が低い定型・周辺業務を指します。この線引きを先に固めることが、BPO委託前の必須ステップとされています。
本記事ではコア業務とノンコア業務の定義から、4象限マトリクスによる仕分け方、業界別のコア業務例、ワークショップの進め方、仕分け結果別のアクション、コア誤定義の失敗回避策までを整理します。読了後には、自社の業務を体系立てて棚卸しし、委託対象を見極める判断軸が得られます。
コア業務とノンコア業務の定義
コア業務とノンコア業務の仕分けを始める前に、両者の意味を正確にそろえる必要があります。本章では2つの業務の定義と、なぜ仕分けが業務改革の起点になるのかを整理します。定義を共有しておくと、社内での議論がかみ合いやすくなります。
コア業務とは何か
コア業務とは、企業の競争力・売上・利益に直接結びつく中核業務を指します。製品開発や営業戦略の立案、重要顧客との関係構築など、その企業ならではの強みを生み出す活動が該当します。外部へ委託すると競争優位そのものを手放す恐れがあるため、原則として社内に残す対象とされています。判断の軸は「この業務が自社の差別化を生んでいるか」です。
ノンコア業務とは何か
ノンコア業務とは、事業運営に欠かせないものの、成果への直接的な貢献度が低い定型・周辺業務を指します。経理の記帳、給与計算、データ入力、問い合わせ一次対応などが代表例です。手順が標準化しやすく、社外の専門業者でも同等以上の品質で処理できる業務が多く含まれます。委託や自動化による効率化の余地が大きい領域です。
仕分けが業務改革の起点になる理由
限られた人員と時間をどこへ配分するかは、経営の根幹に関わる判断です。ノンコア業務に社内リソースを割き続けると、コア業務へ投じる時間が削られ、成長機会を逃しかねません。仕分けによって業務の優先順位を可視化すれば、外注・自動化・廃止の打ち手を体系的に検討できます。BPO委託の効果を最大化するうえで、仕分けは欠かせない前段の工程です。
リクープXの視点:BPOの全体像は BPOとは?意味・種類・メリット で俯瞰できます。
コア業務とノンコア業務の違いを整理する
コアとノンコアは二択で割り切れるものではなく、判断軸を複数持つことで精度が高まります。本章では両者を分ける主な観点を示し、グレーゾーンの扱い方を解説します。観点を明文化しておくと、属人的な判断のばらつきを抑えられます。
売上・競争力への貢献度で見る
最も重要な軸は、その業務が売上や競争力にどれだけ直接寄与しているかです。新規顧客の獲得や独自サービスの企画は貢献度が高く、コア業務に分類されます。一方で請求書の発行や経費精算は事業に必要でも、貢献は間接的です。貢献度の高低を起点に置くと、仕分けの大枠が定まります。
標準化・代替可能性で見る
手順が標準化でき、社外でも同等の品質で再現できる業務はノンコア業務に寄ります。逆に、自社固有の知見や属人的な判断を要する業務はコア業務に近づきます。代替可能性が高い業務ほど外注や自動化に向いており、低い業務ほど社内に残す価値が高いとされています。
機密性・専門性で見る
機密性や専門性の高さも判断材料になります。経営戦略や人事評価のように高度な機密を扱う業務は、安易に外部へ出しにくい領域です。ただし機密性が高くても定型的な処理であれば、秘密保持契約とセキュリティ体制を整えたうえで委託する選択肢があります。機密性は委託可否の絶対基準ではなく、委託条件を決める要素として扱うのが実務的です。
コアとノンコアの違い早見表
下表は2つの業務の違いを主要な観点で整理したものです。自社の業務がどちらに寄るかを照らし合わせる際の目安にできます。
| 観点 | コア業務 | ノンコア業務 |
|---|---|---|
| 売上・競争力への貢献 | 直接的で高い | 間接的で低い |
| 標準化のしやすさ | 低い(属人性が高い) | 高い(手順化しやすい) |
| 代替可能性 | 低い | 高い |
| 外注・自動化の適性 | 原則社内に残す | 委託・自動化の余地が大きい |
| 代表例 | 商品企画、営業戦略、重要顧客対応 | 記帳、給与計算、データ入力 |
業務仕分けの4象限マトリクス
業務を感覚で分けると判断がぶれやすいため、2軸のマトリクスで可視化する方法が有効です。本章では「貢献度」と「代替可能性」を軸にした4象限マトリクスの作り方と、各象限の打ち手を解説します。マトリクスを使うと、議論の土台を全員で共有できます。
2軸の取り方
縦軸に「売上・競争力への貢献度」、横軸に「外部での代替可能性」を置きます。各業務を付箋やスプレッドシートに書き出し、2軸の高低で配置していきます。軸の定義を事前にそろえておくと、配置のばらつきを防げます。1業務あたりの粒度をそろえることも、精度を高めるうえで大切です。
4象限それぞれの意味
第1象限(貢献度・高/代替可能性・低)は社内に残すコア業務です。第2象限(貢献度・高/代替可能性・高)は重要だが外部支援を併用できる業務を指します。第3象限(貢献度・低/代替可能性・高)はBPOや自動化の最有力候補です。第4象限(貢献度・低/代替可能性・低)は廃止や簡素化を検討する対象になります。
4象限と推奨アクション対応表
下表は各象限の意味と、対応する打ち手を整理したものです。仕分け後の方針決定にそのまま活用できます。
| 象限 | 貢献度 | 代替可能性 | 主な業務イメージ | 推奨アクション |
|---|---|---|---|---|
| 第1象限 | 高 | 低 | 商品企画、営業戦略 | 社内で強化・投資 |
| 第2象限 | 高 | 高 | 専門設計、重要分析 | 社内主導+外部支援の併用 |
| 第3象限 | 低 | 高 | 記帳、データ入力、一次対応 | BPO委託・自動化 |
| 第4象限 | 低 | 低 | 形骸化した報告、重複作業 | 廃止・簡素化 |
マトリクス作成時の注意点
業務を配置する際は、現状の負荷ではなく本来の貢献度で評価する姿勢が重要です。担当者の労力が大きい業務をコアと誤認しやすいため、注意が必要です。判断に迷う業務はいったん境界線上に置き、後述のワークショップで合議する運用が現実的です。
業界別のコア業務例
コア業務とノンコア業務の線引きは、業界によって大きく異なります。本章では代表的な業界を例に、コアとみなされやすい業務を整理します。自社の業界特性に当てはめる際の参考にできます。
製造業のコア業務例
製造業では製品設計、生産技術の改善、品質管理の中核工程などがコア業務に位置づけられます。製品の競争力を左右する技術ノウハウが集約されるためです。一方で原価計算の集計や購買事務、在庫データの入力などはノンコア業務として外注・自動化の対象になりやすい領域です。
運送・物流業のコア業務例
運送・物流業では配車計画、ルート最適化、荷主との関係構築がコア業務とされます。これらが運行効率とサービス品質を直接左右するためです。点呼記録の整理、請求書発行、勤怠データの集計などの周辺事務は、ノンコア業務として委託しやすい業務に該当します。
サービス・小売業のコア業務例
サービス・小売業では商品企画、店舗運営の改善、顧客体験の設計がコア業務になります。ブランドの差別化を生む活動に位置づけられるためです。受発注データの入力、問い合わせの一次対応、ポイント管理の事務処理などは、標準化しやすいノンコア業務として整理できます。
自社の業界に当てはめる手順
業界例はあくまで一般的な傾向であり、同じ業務でも企業の戦略次第でコアにもノンコアにもなり得ます。自社の差別化の源泉がどこにあるかを先に言語化し、それに直結する業務をコアとして抽出する手順が有効です。業界の慣例をうのみにせず、自社固有の強みを基準に判断します。
仕分けワークショップの進め方
仕分けは一人の判断ではなく、関係者の合議で進めると精度と納得感が高まります。本章では業務の棚卸しから合意形成までのワークショップ手順を解説します。手順をそろえておくと、再現性のある仕分けが実現します。
参加メンバーの選び方
ワークショップには各部門の業務に精通した担当者と、全体最適を判断できる管理職を組み合わせて招きます。現場の実態と経営の方針の両面から評価するためです。部門間で利害が対立する業務もあるため、中立的な進行役を置くと議論が円滑に進みます。
業務棚卸しの進め方
まず各部門で日常業務を洗い出し、業務名・頻度・所要時間・担当者を一覧化します。粒度がそろわないと比較しにくいため、1業務あたりの単位を事前に決めておきます。棚卸しの段階では網羅性を優先し、評価は次の工程に回す進め方が効率的です。
4象限への配置と合意形成
棚卸しした業務を前章のマトリクスへ配置し、参加者で配置の妥当性を議論します。意見が割れる業務は、貢献度の根拠を言葉にして判断軸をそろえます。最終的に各象限の業務リストと推奨アクションを合意文書としてまとめると、後の実行段階で迷いが生じにくくなります。
ワークショップ進行ステップ表
下表は半日〜1日で実施する場合の標準的な進行例です。自社の規模に応じて時間配分を調整できます。
| ステップ | 主な内容 | 目安時間 |
|---|---|---|
| 1. 目的共有 | 仕分けのゴールと評価軸の確認 | 30分 |
| 2. 業務棚卸し | 部門ごとの業務洗い出し | 60〜90分 |
| 3. マトリクス配置 | 2軸への配置と議論 | 60〜90分 |
| 4. アクション決定 | 象限別の打ち手の合意 | 45分 |
| 5. 実行計画化 | 担当・期限の割り当て | 30分 |
仕分け結果別のアクション
仕分けはゴールではなく、打ち手を決めるための前提です。本章では4象限の結果に応じた3つの代表的なアクション、自動化・BPO委託・廃止の使い分けを解説します。象限と打ち手を対応づけると、実行に移しやすくなります。
自動化を選ぶケース
定型的でルールが明確な業務は、RPAやクラウドツールによる自動化に向いています。データ転記や定例レポートの作成など、人の判断をほとんど要しない業務が候補です。初期構築の手間はかかるものの、処理量が多い業務ほど投資回収が見込めます。ただし例外処理が頻発する業務は、自動化の適性が下がる点に注意が必要です。
BPO委託を選ぶケース
専門知識を要する一方で自社の差別化に直結しない業務は、BPO委託が適しています。経理・労務・カスタマーサポートなどの周辺事務が代表例です。外部の専門体制を活用すると、品質を保ちながら社内工数を削減できます。委託の際は、独占業務の切り分けに留意する必要があります。税務申告や税務相談は税理士、社会保険・労働保険の申請手続きは社労士、法的助言や個別の契約判断は弁護士の独占業務とされています。BPOが担うのは事務代行・周辺事務であり、独占業務は提携する士業が担う体制を前提に設計します。
廃止・簡素化を選ぶケース
貢献度も代替可能性も低い業務は、廃止や簡素化を検討します。形骸化した報告書や重複した承認フローなど、続ける理由が薄い業務が対象です。やめても支障がないかを小さく試し、問題がなければ正式に廃止します。業務量そのものを減らす取り組みは、外注費を抑えるうえでも効果が高いとされています。
アクション選定の判断フロー
打ち手の選定では、まず廃止できないかを問い、次に自動化、最後に委託の順で検討すると無駄が生じにくくなります。業務量を減らしてから委託対象を絞り込むと、外注範囲が最適化されるためです。順序を固定しておくと、安易な丸投げを防げます。
失敗事例(コアの誤定義)
仕分けで最も避けたいのが、コア業務とノンコア業務の取り違えです。本章では誤定義によって生じる典型的な失敗パターンと、その回避策を一般的なモデルとして整理します。事前に失敗の型を知っておくと、同じ轍を踏みにくくなります。
コア業務を誤って外注した失敗
顧客対応を単なる定型業務と捉えて全面的に外注した結果、顧客との関係構築こそが競争力の源泉であり、それを失う失敗が起こり得ます。表面的な作業量だけで判断し、業務の戦略的価値を見落とした典型例です。回避には、その業務が差別化を生んでいるかを評価軸に加えることが有効とされています。
ノンコア業務を抱え込み続けた失敗
委託できる定型業務を「自社しかできない」と思い込み、社内で抱え続けるケースもあります。結果として人員が周辺事務に拘束され、コア業務への投資が滞ります。代替可能性を客観的に評価し、外部でも再現できる業務は手放す判断が求められます。
仕分け基準が属人化した失敗
仕分けを特定の担当者の感覚に依存させると、判断基準が共有されず再現できなくなります。担当者の異動で仕分けの一貫性が崩れる恐れもあります。評価軸を文書化し、合議で決める仕組みにしておくことが、属人化を防ぐ対策になります。
失敗パターンと回避策の対応表
下表は代表的な失敗と、その回避策を整理したものです。仕分けを設計する際のチェックリストとして使えます。
| 失敗パターン | 主な原因 | 回避策 |
|---|---|---|
| コア業務の外注 | 戦略的価値の見落とし | 差別化への寄与を評価軸に追加 |
| ノンコア業務の抱え込み | 代替可能性の過小評価 | 外部再現性を客観評価 |
| 基準の属人化 | 評価軸の未文書化 | 軸の明文化と合議運用 |
| 一度きりの仕分け | 事業変化への未対応 | 定期的な見直しサイクル |
仕分けを継続的に見直す重要性
業務の価値は事業環境とともに変化するため、仕分けは一度で完結しません。本章では仕分けを定期的に更新する意義と、見直しの進め方を解説します。継続の仕組みを持つと、業務構成を常に最適へ近づけられます。
事業環境の変化に合わせて再評価する
新規事業の立ち上げや市場の変化により、かつてのノンコア業務がコア業務へ転じる場合があります。逆もまた起こり得ます。半期や年度の節目で仕分けを再評価すると、業務配分のずれを早期に補正できます。一度決めた線引きを固定化しない姿勢が重要です。
委託後の効果を測定する
BPO委託や自動化を実行したら、削減できた工数やコスト、品質への影響を定点で測定します。効果が想定を下回る場合は、委託範囲や進め方を見直します。測定結果を次の仕分けへ反映させると、改善が循環します。
小さく始めて段階的に広げる
最初から全業務を一気に仕分けようとすると、現場の負荷が高まり頓挫しやすくなります。負荷が大きく代替可能性の高い業務から着手し、効果を確かめながら範囲を広げる進め方が現実的です。段階的な導入は、社内の納得感を育てるうえでも有効とされています。
よくある質問(FAQ)
Q1. コア業務とノンコア業務はどう違いますか?
コア業務は企業の競争力や売上に直接結びつく中核業務を指し、商品企画や営業戦略などが該当します。ノンコア業務は事業に必要でも成果への貢献が間接的な定型・周辺業務を指し、記帳やデータ入力が代表例です。貢献度と代替可能性の2軸で判断すると整理しやすくなります。
Q2. 仕分けはどの順番で進めればよいですか?
まず業務を棚卸しして一覧化し、貢献度と代替可能性の2軸マトリクスへ配置します。次に各象限の打ち手を決め、廃止・自動化・委託の順で検討する流れが効率的です。関係者の合議で進めると、判断のばらつきを抑えられます。
Q3. 機密性の高い業務は委託できませんか?
機密性が高くても、定型的な処理であれば委託できる場合があります。秘密保持契約とセキュリティ体制を整えることが前提です。ただし経営戦略の立案など高度な判断を伴う業務は、社内に残す方が安全とされています。委託可否は機密性だけでなく、業務の性質を総合して判断します。
Q4. BPO委託で税務や労務の手続きも任せられますか?
税務申告や税務相談は税理士、社会保険・労働保険の申請手続きは社労士、法的助言は弁護士の独占業務とされています。BPOが担うのは事務代行や周辺事務であり、独占業務は提携する士業が担う体制が前提です。個別の判断が必要な場合は、該当する専門家へご相談ください。
Q5. 仕分けはどのくらいの頻度で見直すべきですか?
事業環境の変化に応じて、半期や年度の節目での再評価が推奨されています。新規事業の開始や市場の変化で、業務の位置づけが変わるためです。委託後は効果を定点で測定し、結果を次の仕分けへ反映させると改善が続きます。
まとめ
コア業務とノンコア業務の仕分けは、BPO委託や自動化の効果を最大化するための前段の工程です。貢献度と代替可能性の2軸による4象限マトリクスで業務を可視化し、象限ごとに廃止・自動化・委託の打ち手を決める流れが基本になります。業界例をうのみにせず、自社の差別化の源泉を基準にコアを抽出する姿勢が重要です。まずは業務の棚卸しから着手し、関係者の合議で評価軸をそろえてみてください。自社のどの業務から委託すべきか迷う場合は、提携する専門家への相談を入り口に検討を進められます。
監修者情報
<監修者欄プレースホルダ>
本記事はBPO横断メディア「リクープX」編集部が執筆しました。税務・労務・法務に関わる個別の判断が必要な場合は、税理士・社会保険労務士・弁護士など該当する専門家へのご相談をおすすめします。
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出典・参考文献
- 中小企業庁「中小企業白書」 https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/
- 総務省「情報通信白書」 https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/
- 独立行政法人中小企業基盤整備機構「J-Net21」 https://j-net21.smrj.go.jp/