社用車・業務用車両を複数台管理する総務担当者にとって、24か月点検の管理は2年ごとに繰り返される定例業務です。しかし「点検整備記録簿に何を記入すればよいのか」「保管はいつまで必要か」「電子化は認められるのか」と疑問を抱えながら運用している担当者も少なくありません。点検整備記録簿は道路運送車両法で作成・備置きが義務づけられており、未整備の状態が続くと法令違反となる可能性があります。
本記事では、24か月点検における点検整備記録簿の書き方・保管年数・電子化の動向を総務担当者向けに体系的に整理します。整備工場への委託を前提とした企業でも、受領書類の確認や社内台帳管理に役立つ内容を優先して解説しています。
24か月点検(法定定期点検)とは
道路運送車両法第48条は自動車の使用者に定期的な点検整備を実施する義務を課しています。本章では24か月点検が何を目的とした点検か、どの車種に適用されるかを整理します。記録簿の意義を正しく理解するうえで、制度の全体像を把握しておくことが前提となります。
法定点検の位置づけと義務の根拠
道路運送車両法第48条は、自動車の使用者に対して「国土交通省令で定める技術上の基準により、自動車を点検しなければならない」と規定しています。乗用車の場合、12か月ごとと24か月ごとの2種類の定期点検が義務づけられています。これらは任意ではなく法定の義務であり、未実施のまま走行を続けることは同法の違反となります。点検結果の記録は道路運送車両法第49条が別途定めており、実施した点検を記録簿に記入する義務も使用者に課されています。
対象車種と実施タイミング
乗用車(自家用・業務用)では、2年ごとに24か月点検の実施が求められます。車検も同じ2年周期のため、実務上は車検と同時に受ける形が一般的です。事業用の貨物自動車や乗合自動車は、これに加えて3か月・6か月・12か月の定期点検義務が課されており、管理サイクルがより短く設定されています。社用車の車種構成によって適用される点検区分が異なるため、保有車両の種別を事前に把握しておく必要があります。
12か月点検と24か月点検の違い
12か月点検は主要な安全部品の外観確認や動作確認を中心とした点検です。24か月点検はそれに加えてブレーキの分解点検やサスペンション系統の詳細確認など、より踏み込んだ項目が含まれます。2021年以降の改正では、OBD(車載式故障診断装置)を活用した点検項目が新たに加わりました。OBD点検は専用スキャンツールが必要なため、整備工場への委託が現実的な選択肢です。
点検整備記録簿の種類と入手方法
記録簿は「どれでもよい」わけではなく、車種ごとに使用すべき様式が国土交通省の告示で定められています。本章では様式の区分と実際の入手方法を整理します。様式を誤ると点検項目に漏れが生じるため、自社の保有車両に合う様式を正確に把握しておく必要があります。
車種別の様式区分
道路運送車両法施行規則の別表では、車種ごとに記録簿の様式が定められています。乗用車(普通・小型・軽自動車)は別表第7の様式、貨物自動車は別表第2〜6の様式が対応します。二輪自動車にはさらに専用の様式があります。複数の車種を保有する企業では、車種ごとの様式を混用しないよう管理台帳で紐付けておくことが推奨されます。
入手方法の比較
記録簿の入手方法は複数あり、費用と利便性のバランスで選択できます。
| 入手経路 | 費用目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 整備工場・ディーラー | 無料〜数十円 | 点検実施と同時に提供されることが多い |
| 国土交通省ウェブサイト(PDF) | 無料 | 自社でダウンロード・印刷できる |
| カー用品店・文具店 | 数百円〜 | まとめ買いに向く |
| 車両管理クラウドシステム | 月額費用に含む | デジタル記録として一元管理できる |
国土交通省のウェブサイトでは法定様式のPDFが無料で公開されており、自社で印刷して利用できます。2021年のOBD追加など法改正を反映した最新様式を使う必要があるため、古い様式を継続使用している場合は更新が必要です。車両管理システムを活用する企業では、システム内のデジタルフォームを利用するケースが増えています。
記録簿の書き方・記入手順
整備工場が記録簿を作成するケースが多いですが、受け取り時の確認や差戻しの判断は総務担当者の役割です。本章では記入の基本ルールと、委託先から記録簿を受け取る際の確認ポイントを整理します。受領時の確認を徹底しておくと、後日の法令対応がスムーズになります。
記入の基本フロー
記録簿の記入は「点検実施日・実施者の記入→各項目の点検と記号記入→整備箇所の詳細記録→整備士の署名・押印」の順で進みます。整備工場に委託している場合は工場のスタッフが各ステップを担いますが、最終的に使用者(企業)へ引き渡される前に全項目の記入漏れがないかを確認します。特に「否(×)」と記録された項目は、対応内容が明記されているかどうかの確認が重要です。
記入記号と意味
記録簿には統一された記入記号があり、読み方を理解しておくと受け取り確認がスムーズになります。
| 記号 | 意味 | 使用例 |
|---|---|---|
| ○(良) | 基準に適合 | 問題のない正常な状態 |
| ×(否) | 基準に不適合 | 整備が必要な状態 |
| 交 | 部品交換実施 | オイル・パッド・フィルターの交換 |
| 調 | 調整実施 | ブレーキ・空気圧などの調整 |
| 修 | 修理実施 | 損傷・劣化箇所の修繕 |
| 清 | 清掃実施 | バッテリー端子・フィルターの清掃 |
| ─ | 該当なし | 当該車両に装備がない項目 |
全項目に何らかの記号が記入されていること、「×(否)」の項目に対応結果が記載されていることを受け取り時に確認します。空欄がある場合は未点検の可能性があるため、工場に問い合わせたうえでの受領が推奨されます。
委託時の受け取り確認ポイント
整備工場から記録簿を受け取る際は三つの点を確認します。まず全項目に記号が記入されているかを確認します。次に「×(否)」項目がある場合、その対応内容(交換・修理など)が記載されているかを確認します。最後に整備士の署名または押印が入っているかを確認し、記録の証明性を担保します。未記入や空欄がある状態で受け取ってしまうと、後日の車検時に説明できない箇所が残るため注意が必要です。
記入項目の主要カテゴリ
24か月点検の記録簿には多数の点検項目が列挙されています。本章では総務担当者が受け取り確認の際に把握しておくべき主要カテゴリを整理します。カテゴリ別に理解しておくと、記録内容の妥当性判断がしやすくなります。
ブレーキ・安全装置系
ブレーキ系統はすべての法定点検で最も重視される項目群です。ブレーキペダルの踏みしろと効き具合、ブレーキ液量と液漏れの有無、ブレーキホース・パイプの損傷状態が基本確認項目です。パーキングブレーキの引きしろと効き具合、ブレーキパッドおよびシューの摩耗量も24か月点検の記録対象に含まれます。これらの項目に「×(否)」が記録されている場合は、対応内容の詳細を工場に確認する必要があります。
タイヤ・走行装置・操縦系
タイヤの溝の深さ・損傷・空気圧は走行安全の基礎であり、24か月点検でも詳細に確認されます。ホイールナットの緩みと損傷、ショックアブソーバーのオイル漏れと損傷も確認対象です。ステアリングのガタや操作力の変化は経年劣化の兆候として記録されるため、長く使用している社用車ほど「調(調整)」や「修(修理)」が記入される可能性が高くなります。
エンジン・OBD・排気系
エンジンオイルの量と汚れ、ベルト類の張りと損傷、燃料装置からの漏れが基本項目です。2021年以降はOBD(車載式故障診断装置)による点検が追加されており、専用スキャンツールで読み取った故障コードの有無が記録されます。排気系統の損傷や排気漏れも確認項目に含まれるため、記録簿のエンジン欄には比較的多くの項目が並びます。
保管義務の根拠と保管年数
点検整備記録簿は作成するだけでなく、適切な期間にわたり保管する義務もあります。本章では保管義務の法令根拠と実務上の保管年数の考え方を整理します。複数台を管理する場合の台帳設計も合わせて確認します。
「備え置く」義務の法令根拠
道路運送車両法施行規則第51条の5は、使用者が「点検整備記録簿を自動車に備え置かなければならない」と規定しています。「備え置く」とは単なる保管ではなく、グローブボックスなど車内に常時携行した状態を指すとされています。整備工場に点検を委託している場合でも、記録簿を会社のデスクにしまっておくだけでは備置き義務を果たしていないと解される可能性があるため、受領後は速やかに該当車両のグローブボックスへ収納する運用の確立が重要です。
保管年数の目安
法令では具体的な保管年限は明示されていませんが、次の定期点検が完了するまでが実務上の基準とされています。
| 記録の種類 | 実務上の保管目安 |
|---|---|
| 24か月点検記録簿 | 次の24か月点検実施まで(2年程度) |
| 12か月点検記録簿 | 次の12か月点検実施まで(1年程度) |
| 事業用自動車の整備記録 | 運行管理規程に従い1〜2年 |
なお、車検証と合わせて整備履歴を管理したい場合は「車検有効期間(2年)+1年程度」を目安として保管している企業も見られます。ただしこの保管年数は法令による明示的な規定ではないため、個別の判断は専門家への確認が推奨されます。
複数台管理時の台帳設計
社用車が複数台ある場合は、各車両の記録簿の有無・最終点検日・次回点検予定日は台帳で一元管理する体制が推奨されます。スプレッドシートや車両管理システムにこれらを登録すると、法定期限の見落としを防ぎやすくなります。廃棄した記録簿は廃棄日と廃棄理由を台帳に記録しておくと、後日の確認に役立ちます。リース車の場合はフルメンテナンスリースか否かを確認し、記録簿の帰属先を契約書で明確にしておく必要があります。
保管場所と紛失時の対応
法令上の「備え置く」義務を果たすためには、保管場所の運用ルールを社内で明確にする必要があります。本章では実務的な保管方法と、紛失・き損した場合の対応手順を解説します。複数台を管理する企業ほど紛失リスクが高まるため、予防策と事後対応の両面を準備しておく必要があります。
推奨の保管場所と運用ルール
グローブボックスは整備手帳・自賠責保険証・車検証とともに記録簿を収納できる最も一般的な場所です。社用車では複数の担当者が乗車するため、「グローブボックス右側のクリアファイルに収納する」のように場所を固定する社内ルールを設けると紛失防止につながります。車両ごとに一冊の記録ファイルを用意し、歴代の記録を年代順に収納する運用も整備履歴の確認に役立ちます。
紛失・き損した場合の対応手順
記録簿を紛失・き損した場合は、まず点検を実施した整備工場に控えデータの有無を確認します。整備工場のシステムに記録が残っていれば、再発行や証明書の発行に応じてもらえる場合があります。再発行が難しい場合は、新しい様式を入手して現状の車両状態の再点検・記録が現実的な対応策です。
デジタルバックアップの活用
紙の記録簿は劣化・紛失リスクがあるため、受け取り時にスキャンまたはスマートフォンで撮影し、社内の車両管理フォルダに保存しておくことが推奨されます。デジタルコピーは法令上の「備え置き」の代替にはなりませんが、紛失時の対応を迅速に進めるための実務的な措置として広く活用されています。実物の紙記録簿を車内に備置きしながら、デジタルコピーを管理部署が保有する二重管理が現時点では堅実な対応策です。
電子記録簿・デジタル化の現状と注意点
ペーパーレス化を進める企業では、紙の記録簿をデジタル管理へ移行したいニーズが高まっています。本章では電子化が認められる条件と現状の実務上の注意点を整理します。法令要件を把握せずに電子化を進めると、車検時に支障が生じる可能性があるため注意が必要です。
電子化推進の背景と現状
国土交通省は自動車整備のデジタル化を推進しており、電子点検整備記録の活用に向けた整備環境が整いつつあります。2023年頃から業界団体や行政による電子記録の枠組みづくりが進んでいますが、2026年6月時点では車検場での電子記録提示に関する対応が施設ごとに異なる場合があります。法令改正の動向は国土交通省の通達や告示を随時確認し、自社の運用方針をアップデートしていくことが求められます。
デジタル化の選択肢と費用感
| 種類 | 概要 | 費用目安 |
|---|---|---|
| 車両管理クラウドシステム | 点検記録・保険・車検証を統合管理 | 月額1〜5万円(台数に応じて変動) |
| 整備工場の顧客管理システム | 委託先工場がデジタル保管 | 工場サービスに含まれる場合が多い |
| 汎用クラウドストレージ | 記録簿スキャンをフォルダ管理 | 月額数百円〜 |
総務部門で手軽に始められる方法として、紙の記録簿をスキャンして社内サーバーや共有ドライブに保存するアプローチがあります。台数が多い企業では車両管理クラウドシステムの導入により、点検期限アラートや書類の一元管理が実現できます。
電子化導入時の注意点
電子記録のみを保有する状態で車検を受ける場合、検査場での提示方法を事前に確認する必要があります。対応していない施設では紙の提出を求められる場合があるため、移行期間中は紙のバックアップを維持する体制が推奨されます。導入するシステムが法令改正(点検項目の追加など)に追随してフォームを更新しているかどうかも、選定時の重要な確認ポイントになります。
よくある質問(FAQ)
点検整備記録簿の管理や車検対応でよく寄せられる疑問を、Q&A形式でまとめます。保管義務の範囲、整備工場委託時の責任所在、電子化の可否など、実務で判断に迷いやすい項目に絞って解説します。
Q1. 点検整備記録簿がない状態で車検を受けられますか?
車検の受検自体は「後整備」として記録簿がなくても可能な場合があります。ただし後整備は点検義務を未了のまま走行を続ける行為を意味し、道路運送車両法上の義務違反となる可能性があります。車検前に点検を完了させ、記録簿を用意した状態で臨むことが法令上の本来の対応とされています。
Q2. 整備工場に委託すれば記録簿の管理はすべて任せられますか?
整備工場が記録を作成する場合でも、使用者が記録簿を「自動車に備え置く」義務は使用者側に残ります。委託後に記録簿を受け取り、該当車両のグローブボックスへの収納手順を社内で徹底する必要があります。
Q3. 記録簿を紛失した場合はどうすればよいですか?
まず点検を実施した整備工場に控えデータの有無を確認します。整備工場のシステムに記録が残っていれば、再発行や証明書の発行に応じてもらえる場合があります。再発行が難しい場合は、新しい様式を入手して現状の車両状態の再点検・記録が現実的です。
Q4. リース車の記録簿管理はリース会社が担いますか?
フルメンテナンスリースではリース会社が法定点検と記録管理を担うのが一般的です。ファイナンスリース(メンテナンスなし)では使用者(借主企業)が整備・記録管理の責任を負います。契約締結時に整備義務の所在を確認しておく必要があります。
Q5. 電子記録簿は車検場で有効ですか?
2026年6月時点では、車検場ごとに電子記録の受理対応が異なる場合があります。電子化を進める場合は利用する車検場や運輸支局に事前確認のうえ、紙のバックアップ体制も並行して維持するのが現実的な対応とされています。
まとめ
点検整備記録簿の24か月分は、道路運送車両法に基づく法定書類です。整備工場に委託している場合でも、記録簿の受け取りと車内への備置きは使用者の義務として残ります。保管年数の明示的な法定期限はありませんが、次の定期点検が完了するまでを目安に保管するのが実務上の標準的な考え方です。電子化は法整備が進んでいますが、2026年6月時点では紙のバックアップ体制を維持しながらデジタルを補助的に活用する運用が現実的です。複数台を管理する企業では台帳との連携と次回点検予定の一元管理を整えておくと、法定期限の見落としや記録簿の紛失リスクを低減できます。まず自社の保有車両に合う様式の確認と、整備工場との引き渡し・受け取り手順の整備から着手するとよいでしょう。
監修者情報
<監修者欄プレースホルダ>
本記事はリクープX編集部が執筆しました。車両管理・整備記録の法的手続きや個別判断は、専門家へのご相談をおすすめします。
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出典・参考文献
- e-Gov法令検索「道路運送車両法」 https://laws.e-gov.go.jp/
- 国土交通省「自動車の点検・整備制度」 https://www.mlit.go.jp/jidosha/
- 国土交通省「OBD検査の導入」(国土交通省通達) https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_fr7_000007.html